急性心筋梗塞後心不全へのエンパグリフロジンの効果は:EMPACT-MI
Empagliflozin after Acute Myocardial Infarction
背景
SGLT2阻害薬エンパグリフロジンは、心不全(HF)・2型糖尿病(T2D)・慢性腎臓病(CKD)患者に対する心血管転帰への有益性が示されているが、急性心筋梗塞(AMI)患者には。
アメリカBaylor Scott and White Research InstituteのButlerら(EMPACT-MI)は、HF高リスクのAMI入院患者6,522名を対象として、これを検証するRCTを行った(対照:プラセボ)。
一次エンドポイントは、心不全による入院と全原因死亡の複合である(追跡期間中央値:17.9ヵ月)。
結論
エンパグリフロジンの一次エンドポイントに対する効果を認めなかった(HR 0.90)。ただし、HFによる初回入院には多少の効果が示唆された(HR 0.77)。安全性プロファイルに問題はなかった。
評価
エンパグリフロジンのAMI患者のHF予防効果仮説は、欧州のEMMYがNT-proBNP低減効果を示して強まったが(https://academic.oup.com/eurheartj/article/43/41/4421/6677315)、アメリカの大規模検証で、「劇的な効果はない」という結論に収束した。現在の標準的AMI管理ではHFの発生率自体が激減しており、新しいHF予防薬の効果を確立することは困難である。
AMI後HF高リスク患者への同薬の汎用は支持されないが、T2D・CKD等の合併患者では当然推奨されうる。

