脳葉内出血に低侵襲的早期血腫除去術MIPSが有益:ENRICH試験
Trial of Early Minimally Invasive Removal of Intracerebral Hemorrhage
背景
脳内出血に対する手術療法の意義は救命効果に限定され、機能予後改善効果は否定されてきた。
アメリカEmory UniversityのPradillaら(ENRICH)は、低侵襲的な経脳溝傍神経線維束法(MIPS:Minimally Invasive Parafascicular Surgery)を用いた血腫除去手術の有益性を検証するRCTを行った。対象は、前方基底核部か脳葉内に発生した血腫量30〜80mLの脳内出血患者300名で、最終健常確認24時間以内にMIPS+保存的治療か保存的治療のみかに割り付けた。一次エンドポイントは、発症180日目の効用加重修正Rankinスケール(UW-mRS)である。
結論
全例の約3割は基底核出血、約7割は脳葉出血であった。MIPS術の一次エンドポイントに対する効果を認めた。発症180日目のUW-mRSは手術群0.458、保存的治療群0.374であった[手術群の優越性の事後確率:0.981(事前に設定した優越性閾値:0.975)]。
平均差は脳葉内出血群では0.127であったのに対して基底核出血群では−0.013であった。発症後30日間の死亡率は保存的治療群の18.0%に対し、手術群では9.3%であった。手術群の5例(3.3%)で、術後出血と神経症状の悪化が認められた。
評価
MIPSは従来の脳回部皮質切開ではなく、脳溝底部皮質とU線維を切開して、チューブ状の透明リトラクターを挿入し、白質線維束と平行に脳内血腫にアプローチする方法である。もっぱら脳葉内出血への効果に限定されるとみられる結果だが、確実な有益性を示したことは画期的で、追試と汎化が試みられることになる。


