急性大動脈症候群をどう特定するか
Diagnosis of Acute Aortic Syndrome in the Emergency Department (DAShED) study: an observational cohort study of people attending the emergency department with symptoms consistent with acute aortic syndrome
背景
急性大動脈症候群(AAS)は稀ながら致死的な病態であり、救急外来での正しい診断には困難を伴う。
イギリスEmergency Medicine Research Group EdinburghのMcLatchieらは、2022年9月から11月に、AASの可能性がある症状(胸痛・背部痛・腰痛、失神、分枝灌流障害に関連する症状)を伴い、救急外来を受診した成人患者の多施設観察コホートにおいて、AASの有病率、CT・CT血管造影検査(CTA)の実施率、医師および臨床意思決定ルールのパフォーマンスを記述した。
結論
5,548名の患者(年齢中央値55歳)の0.3%(14名)でAASが確認され、30日間のフォローアップでAASの見逃しは認められなかった。
救急医がAASの可能性があるとした1,046名のうち、10名が実際にAASと診断され、特にAASが鑑別の最上位に挙げられた147名では、5名がAASであった。反対に、AASの可能性がないとされた3,319名でも、2名のAAS診断があった。10%にあたる540名でCT検査が行われ、407名(7%)はCTAであった。
救急医によるAASの可能性評価(0から10)は、受信者操作特性曲線下面積(AUROC)が0.958であり、これに対して、臨床意思決定ツールのAUROCは、Aortic Dissection Detection Risk Score(ADD-RS)が0.674、AORTAsが0.689、カナダのガイドラインが0.818、Sheffieldが0.628であった。
評価
AASの可能性のある症状を呈する患者でのAAS有病率は0.3%と低かったが、10%がCT検査を受けていた。この広範な集団で、臨床医のゲシュタルトはかなり優秀に働いており、逆に臨床意思決定ルールの付加的価値は乏しいと思われる。CTの削減余地やDダイマーの組み込みなども含め、さらなる研究が待たれる。