急性大動脈症候群をどう特定するか
Diagnosis of Acute Aortic Syndrome in the Emergency Department (DAShED) study: an observational cohort study of people attending the emergency department with symptoms consistent with acute aortic syndrome

カテゴリー
救急医療
ジャーナル名
Emergency Medicine Journal
年月
February 2024
41
開始ページ
136

背景

急性大動脈症候群(AAS)は稀ながら致死的な病態であり、救急外来での正しい診断には困難を伴う。
イギリスEmergency Medicine Research Group EdinburghのMcLatchieらは、2022年9月から11月に、AASの可能性がある症状(胸痛・背部痛・腰痛、失神、分枝灌流障害に関連する症状)を伴い、救急外来を受診した成人患者の多施設観察コホートにおいて、AASの有病率、CT・CT血管造影検査(CTA)の実施率、医師および臨床意思決定ルールのパフォーマンスを記述した。

結論

5,548名の患者(年齢中央値55歳)の0.3%(14名)でAASが確認され、30日間のフォローアップでAASの見逃しは認められなかった。
救急医がAASの可能性があるとした1,046名のうち、10名が実際にAASと診断され、特にAASが鑑別の最上位に挙げられた147名では、5名がAASであった。反対に、AASの可能性がないとされた3,319名でも、2名のAAS診断があった。10%にあたる540名でCT検査が行われ、407名(7%)はCTAであった。
救急医によるAASの可能性評価(0から10)は、受信者操作特性曲線下面積(AUROC)が0.958であり、これに対して、臨床意思決定ツールのAUROCは、Aortic Dissection Detection Risk Score(ADD-RS)が0.674、AORTAsが0.689、カナダのガイドラインが0.818、Sheffieldが0.628であった。

評価

AASの可能性のある症状を呈する患者でのAAS有病率は0.3%と低かったが、10%がCT検査を受けていた。この広範な集団で、臨床医のゲシュタルトはかなり優秀に働いており、逆に臨床意思決定ルールの付加的価値は乏しいと思われる。CTの削減余地やDダイマーの組み込みなども含め、さらなる研究が待たれる。

関連するメディカルオンライン文献

大規模臨床試験、新規の薬・機器・手法・因子・メカニズムの発見に関する文献を主に取り上げ、原文の要約と専属医師のコメントを掲載。

(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(救急医療)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Critical Care Medicine (Crit Care Med)、The New England Journal of Medicine (NEJM)