アデノウイルス心筋炎のギャップジャンクション標的を同定
Acute Adenoviral Infection Elicits an Arrhythmogenic Substrate Prior to Myocarditis
背景
アデノウイルスは心筋炎の最も重要な要因の一つで、若年成人の心臓突然死の主要原因となるが、動物モデルがなく、分子レベルでの理解が乏しい。
アメリカFralin Biomedical Research Institute at VTCのSmythらは、マウスアデノウイルス3型感染モデルを新たに開発し、感染急性期の病態を分子・細胞両レベルで解析した。
結論
感染心臓の光学的マッピングにより、刺激伝導速度の低下にギャップジャンクションの機能制御残基Cx43Ser368のリン酸化増が伴うことが明らかになった。Cx43Ser368リン酸化が欠損した変異マウスでは、アデノウイルス3型感染による伝導速度低下はみられなかった。
感染した成体マウス心室心筋細胞のパッチクランプ分析により、IK1・IKs電流密度低下と活動電位持続時間の延長が明らかになった。ヒトアデノウイルス5型は、ヒトhiPSC由来心筋細胞において、Cx43Ser368のリン酸化を増加させており、同期を阻害することが明らかとなった。
評価
初めての動物モデルの開発により、アデノウイルス感染の心臓における主要標的を、ギャップジャンクションにおける機能制御残基Cx43Ser368と特定し、そのリン酸化が不整脈発生の基盤となる、とした研究である。全面的心筋炎の発現に先行する初期イベントであるとして、潜在感染に伴う心突然死の発生の可能性も基礎づけた。