マイクロ・ナノプラスチックのMACEリスクを初めて報告
Microplastics and Nanoplastics in Atheromas and Cardiovascular Events
背景
マイクロ・ナノプラスチック(MNPs)による環境汚染は大きな問題となっているが、その実質的な臨床医学的インパクトは未だ多く未明である。
イタリアUniversity of CampaniaのMarfellaらは、頸動脈内膜剥離術施行予定患者304名を対象として、この問題を検討する前向研究を行った。頸動脈プラークの摘出検体を用いて、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法・安定同位体分析・電子顕微鏡検査により、MNPsの存在を同定した。また、炎症性バイオマーカーを組織で測定した。
一次エンドポイントは、心筋梗塞・脳卒中・全死因死亡の複合である。
結論
手術予定患者の58.4%の頸動脈プラークからポリエチレンが検出され、平均質量はプラーク1 mgあたり21.7μgであった。12.1%ではポリ塩化ビニルも検出された(平均5.2μg/プラーク1mg)。電子顕微鏡検査でも異物粒子がプラーク中のマクロファージ内に視認でき、マクロファージ外にはデブリとして散在していた。これら異物粒子の一部に塩素が含まれることも示された。
アテローム内にMNPsが検出された患者は、検出されなかった患者と比較して一次エンドポイントイベントリスクが高かった(HR 4.53)。
評価
MNPsのヒトへの影響に関しては、現在まで結腸・胎盤・肝臓・脾臓・リンパ節組織などで検出される、という域に留まっていた。重大な臨床イベントに関連する可能性が示されたのは初めてで、画期的な報告である。動物実験では酸化ストレスや毒性効果も示されており、臨床インパクトに関する本格解析が始まることになる。