ICUのC. difficile感染症、交差感染は稀
Longitudinal genomic surveillance of carriage and transmission of Clostridioides difficile in an intensive care unit
背景
Clostridioides difficileは、腸内細菌叢を撹乱し(dysbiosis)、下痢などを引き起こす可能性があり、欧米では医療関連感染の主たる原因として集中的な対策がなされているものの、依然として大きな医療負担となっている。いくつかの調査では、C. difficileには無症候性キャリアが多く含まれることが示唆されているが、現在の予防戦略は無症候性キャリアのリスクを考慮していない。
アメリカUniversity of Michigan のMiles-Jayらは、無症候性キャリアがC. difficileの伝播に果たしている役割を検証するため、ラッシュ大学病院の集中治療室に入室した患者を対象に、9ヵ月間、連日直腸スワブまたは便を採取し(n=3,952)、回収された448のC. difficile分離株について全ゲノムシーケンシングを行った。
結論
179名の患者ごとのシークエンスタイプとして、ST42、ST3、ST26が一般的で、それぞれリボタイプ(RT)106、RT001、RT015と関連した。
ICU入室(n=1,289)あたりの毒素産生性C. difficile保菌率は9.3%であった。解析対象の入室患者(n=1,141)のうち、毒素産生性C. difficileを持ち込んだのは5.9%であった。また、毒素産生性C. difficileの感染解析の対象となった584名のうち、入院時にC. difficileが検出されなかった557名で、28件の毒素産生性C. difficile感染が発生した。さらに、毒素産生性C. difficileが培養陽性となった32件のうち、高い信頼性で他の患者の分離株と関連していると考えられたのは、6件(18.8%)のみであった。
ICU入室時に毒素産生性C. difficileを保菌している患者は、院内発症C. difficile感染症(CDI)のリスクが有意に高かった(HR 24.4)。
評価
毒素産生性C. difficileの交差伝播が確認できたのは、解析対象となったICU患者全体の1%(6/584)ほどに過ぎなかった。現在のCDIが、無症候性キャリアでの移行として生じていることを示唆する驚きの結果で、CDI対策にもインパクトは大きい。


