大規模プロテオミクスで大動脈弁狭窄症のバイオマーカーを同定
Large-Scale Proteomics Identifies Novel Biomarkers and Circulating Risk Factors for Aortic Stenosis
背景
大動脈弁狭窄症(AS)の危険因子を血漿プロテオミクスで特定できるか。
アメリカUniversity of TexasのShahらは、Atherosclerosis Risk in Communities(ARIC)研究に参加した中年期者(年齢60歳±6歳)11,430名と晩年期(年齢76歳±5歳)者4,899名を対象として、4,877種の血漿タンパク質分析を行った。
大動脈弁(AV)イベントは退院コードにより特定した。同時に詳細な心臓超音波検査を実施し、AVピーク速度(AV max)・AV面積・dimensionless index(DI)の変化を評価した。
結論
晩年期でAV max・DIと臨床的AS重症度に関連し、中年期でAV関連入院リスクと関連する52の循環タンパク質を同定した。
そのうち6つは中等〜重度のASと有意に関連しており、 1つの候補マーカーはマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP12)であった。MMP12レベルの上昇は、AV関連入院の発生、AV血行動態の悪化、晩年期の6年間にわたるAV maxの大幅な増加、晩年期のAV石灰化の程度の増加、正常または線維性AV組織よりも石灰化AV組織での発現の増加と強く関連していた。
他の候補マーカーは補体C1q 腫瘍壊死因子関連タンパク質1(C1QTNF1)で、これもAV血行動態およびAV事象のリスクと強く関連した。MR分析により、ASとより高いAV maxの両方に対するC1QTNF1の一貫した潜在的因果関係が特定された。
さらに、成長分化因子-15・循環レプチンレベルとの関連も見出された。この結果は、外部検証によっても支持された。
評価
プロテミクスによるASリスクマーカーの同定の初めての大規模研究である。MMP12はすでに大動脈弁石灰化との関連が注目されているが、代謝性疾患関連因子C1QTNF1との関連の同定は新しい。臨床応用は、他疾患を含めた心血管疾患のプロテオミクスという文脈に統合されていくことになろう。