アテローム性動脈硬化性心血管疾患既往にかかわらない普遍的MACEリスク予測モデルを提唱
Universal Risk Prediction for Individuals With and Without Atherosclerotic Cardiovascular Disease

カテゴリー
循環器
ジャーナル名
Journal of the American College of Cardiology
年月
February 2024
83
開始ページ
562

背景

現在の心血管疾患予防のためのACC/AHAリスク分類システムは、アテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)患者のデータを基にしている。
アメリカJohns Hopkins Bloomberg School of Public HealthのMatsushitaらは、ARIC研究参加者9,138名を対象に、ベースライン(1996〜1998年)におけるアテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の有無に関わらない予測因子のパフォーマンスを検討し、普遍的リスク予測モデルを開発・検証した。
一次エンドポイントはMACE(MI・脳卒中・心不全)である。普遍的アプローチモデルのパフォーマンスを、ASCVD 患者と悲 ASCVD 患者の間で比較評価した。

結論

中央値20年の追跡調査中に、3,209件のMACEイベントが発生し、これには非ASCVDの参加者の2,797件が含まれた。
特定された予測因子は若年性ASCVDの家族歴・hsCRP・Lp(a)・TG・アポリポタンパク質B(APOB)・BMI・NT-proBNP・hs-cTnで、コレステロールガイドラインに基づくrisk enhancerを含んだ。ほとんどの予測因子は、ベースラインのASCVD状態と関係なくMACEと関連した。確立された予測因子と心臓バイオマーカーを使用した普遍的リスク予測モデルは、C統計値が各0.747・0.691で、ASCVDのステータスに関係なく優れたキャリブレーションを示した。
MESA研究参加者5,322名のコホートによる外部検証では、普遍的予測アプローチにより、一部のASCVD患者よりCVリスクが高いASCVD非罹患者も特定された。MESAコホートでは、普遍モデルのC統計値は、非ASCVD参加者とASCVD参加者で各0.766・0.617であった。

評価

ASCVDの既往と無関係なMACE予測モデルの提案である。前向大規模コホートでの検証結果から既存モデルを置換すべきかが検討されることになるが、実装段階では、バイオマーカー多用がもたらす費用対効果の低減も考慮されることになる。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(循環器)

Journal of the American College of Cardiology(JACC)、Lancet、The New England Journal of Medicine(NEJM)、American Heart Journal (AHJ)、Circulation、The Journal of the American Medical Association(JAMA)