小児敗血症・敗血症性ショックの新基準Phoenix Criteriaが登場
Development and Validation of the Phoenix Criteria for Pediatric Sepsis and Septic Shock
背景
2016年に公表されたSepsis-3によって、成人の敗血症の定義は「感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされる状態」へと更新された。一方、小児の敗血症については、Sepsis-1以来の「感染症による全身炎症反応症候群(SIRS)」という定義が修正のうえ用いられてきたが(https://doi.org/10.1097/01.PCC.0000149131.72248.E6)、この度、Society of Critical Care Medicine Pediatric Sepsis Definition Task Forceによって新たな敗血症基準が提示された。
アメリカNorthwestern UniversityのSanchez-Pintoらは、臓器不全の指標を用いた小児敗血症・敗血症性ショックの臨床的基準を策定、検証するべく、アメリカ・コロンビア・バングラデッシュ・中国・ケニアの10の医療システムを含む多施設後向コホート研究を行い、既存の8つの臓器不全スコアから、感染症による小児死亡を最も良く予測するスコアを特定し、小児死亡を予測するモデルに統合、最高のパフォーマンスを示したモデルからPhoenix Sepsis Scoreを開発した。
結論
開発セット(n=3,049,699)で最初の24時間に感染症が疑われた小児172,984名(死亡率1.2%)において、8臓器系リッジ回帰モデルと4臓器系LASSOモデルが最も優れたパフォーマンスを示した。2つのモデルは同程度のパフォーマンスであることから、タスクフォースはよりシンプルな4臓器系モデルを選択した。
このモデルを整数化したバージョンであるPhoenix Sepsis Scoreは、検証セット(n=581,317)において、適合率・再現率(PR)曲線下面積(AUPRC)0.23〜0.38、受信者動作特性曲線下面積(AUROC)0.71〜0.92で死亡を予測した。感染症疑い小児でPhoenix Sepsis Score≧2を敗血症の基準として用い、これに加えて心血管ポイント≧1を敗血症性ショックの基準として用いることで、2005年のIPSCC基準よりも高い陽性適中率、同程度以上の感度が得られた。
評価
データドリブンアプローチにより開発された新たなPhoenix Sepsis Scoreは、呼吸器系・心血管系・凝固系・神経系のポイントからなり、従来の基準よりも優れた診断パフォーマンスを示した。世界の幅広い医療環境からのデータを用いることで、高リソース環境に依存しないスコアである点も重要である。