BRCA変異乳がん患者の妊娠は再発リスクを増加させない
Pregnancy After Breast Cancer in Young BRCA Carriers: An International Hospital-Based Cohort Study

カテゴリー
がん、Top Journal
ジャーナル名
The Journal of the American Medical Association
年月
December 2023
331
開始ページ
49

背景

若年で乳がんを発症した女性は、妊娠・出産をめぐる重大なジレンマに直面する。一般に適切な治療と経過観察が行われていれば、乳がん後の妊娠は安全と考えられているが、(若年乳がんで割合の高い)BRCA1/2変異乳がんについてはデータが少ない。
イタリアUniversity of GenovaのLambertiniらは、世界78施設が参加する後向コホート研究を実施し、40歳以下で浸潤性乳がんと診断され、BRCA1/BRCA2の生殖細胞系列変異を有する女性における、乳がん後の妊娠と無病生存率との関連を検討した(n=4,732)。

結論

コホート全体の乳がん診断時の年齢は、中央値35歳であった。
659名が1回以上の妊娠を経験した。10年時点での累積妊娠発生率は22%であり、診断から妊娠までの期間は中央値3.5年であった。659名のうち45名(6.9%)は人工妊娠中絶を選択し、63名(9.7%)は流産だった。妊娠の完了した517名(79.7%)のうち、91.0%が37週目以降の正期産であり、10.4%は双子であった。情報のある470児のうち、4児(0.9%)が先天異常を有した。
フォローアップ期間7.8年(中央値)で、無病生存率に妊娠の有無による有意な差はなかった(調整HR 0.99)。また、妊娠を経験した女性では、乳がん特異的生存率・全生存率が有意に良好であった。

評価

この多国籍コホートでは、若年性BRCA変異乳がん女性の5人に1人が、10年以内に妊娠を経験しており、母体・胎児に明確な悪影響は認められなかった。出産希望を持つ患者にとっては心強いデータと思われるが、BRCA1キャリアとBRCA2キャリアでアウトカムが異なる可能性も示唆されており、より大きなデータが求められる。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(がん)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Journal of Clinical Oncology (JCO)、Journal of the National Cancer Institute(JNCI)、Lancet、The New England Journal of Medicine(NEJM)、Cancer Research (Cancer Res)