究極の原子分解能電子顕微鏡JEM-ARM300Fを販売開始

日本電子株式会社
2014年5月7日

日本電子株式会社(代表取締役社長 栗原 権右衛門)は、新製品として収差補正装置を備えた原子分解能電子顕微鏡JEM-ARM300Fを開発し、2014年5月より販売を開始しました。

<開発の背景>
材料開発において、透過電子顕微鏡(TEM)は、微細構造を評価する手段として、古くから必要不可欠なツールとなっています。
しかし、先端材料の開発では、材料合成プロセスの精密化が進み、材料の微細構造がナノレベル・原子レベルで設計されるようになり、今までより高い分解能での観察や分析が必要になってきました。

こうしたニーズに応えるために、日本電子では、分解能の限界を破るべく球面収差補正装置を搭載した電子顕微鏡の開発に取り組んでまいりました。
その結果、2009年に球面収差補正装置を搭載した最高加速電圧200kVの原子分解能分析電子顕微鏡JEM-ARM200Fを開発し、商用電子顕微鏡として80pmの分解能(走査透過像:STEM像)を実現しました。JEM-ARM200Fは、原子分解能を達成するために、随所に高安定化技術を取り入れており、すでに全世界に100台以上が出荷され、原子レベルでの観察や分析を身近なものにしました。

一方、収差補正装置の普及に伴い、市場のニーズは、単なる分解能の向上だけではなく、分析感度の向上、その場観察(in-situ)、加速電圧の柔軟性、収差補正の操作性など、多岐に及んできています。

そこで、日本電子では、自社開発の収差補正装置を組み込んだ最高加速電圧300kVの原子分解能電子顕微鏡JEM-ARM300F(愛称:GRAND ARM)をJEM-ARM200Fの上位機種として開発いたしました。
JEM-ARM300Fは、十二極子を採用した自社製補正装置の搭載により、分解能を63pmまで向上することに成功いたしました。(STEM像分解能)
また、お客様のニーズに応じて、高分解能観察を重視した超高分解能構成と、高感度分析やその場観察を重視した構成を選択できるようになりました。

官民の研究開発拠点や半導体企業に向けて販売を予定しています。


<主な特長>
1.超高分解能像観察
自社製収差補正装置の採用により走査透過像(STEM像)において63pm(加速電圧300kV)を実現(照射系球面収差補正装置搭載時)しました。

2.高輝度・低エネルギー分散の特長を有する高性能冷陰極電界放出電子銃を搭載
新規設計の高性能冷陰極電界放出電子銃を標準構成。色収差が低減された高輝度の電子ビームにより高分解能で観察・分析ができます。

3.幅広い加速電圧設定
加速電圧300 kVと80 kVが標準構成。オプションにて、お客様のご要望に応じた加速電圧に対応します。

4.本体とインテグレーションされた収差補正装置
自社開発した球面収差補正装置を結像系(TEM収差補正装置)および、照射系(STEM球面収差補正装置)に搭載可能です。

5.収差補正制御System
自社開発のJEOL COSMO(JEOL Corrector System Module)システムにより収差補正装置の自動調整を実現しました。

6.用途に応じた二種類の対物レンズポールピース
2種類の対物レンズポールピースを開発。お客様の幅広いニーズに応えます。

7.ドライ試料予備排気と高真空を実現した真空排気系
予備排気系に標準でターボ分子ポンプを装備するとともにカラム排気系を強化することで高いレベルの真空を実現し原子レベルでの像観察や分析において汚染や損傷を最小化しました。

8.高安定な鏡筒・架台、安定化試料ステージ、高い電気的安定度
330mmの鏡筒直径で機械的剛性を高め、JEM-ARM200Fで培った安定化技術を基に機械的・電気的安定性、耐環境性を強化しました。

9.広範な信号検出装置群
大口径100mm2までのEDS(エネルギー分散型X線分光器)やEELS(電子エネルギー損失分光器)の装着に加え、反射電子検出器など、最大4種類のSTEM観察検出器が装着可能です。
環状高角度散乱暗視野像、環状低角度散乱暗視野像、環状型明視野像、明視野像の同時観察が可能です。


<主な仕様>
加速電圧:最高300kV
TEM格子分解能:0.05nm(結像系球面収差補正装置搭載時)
STEM分解能:0.063nm(照射系球面収差補正装置搭載時)

本体標準価格:500,000,000円〜
販売予定台数:10台/年間

企業サイトURL
http://www.jeol.co.jp/
ニュース・プレスリリース
http://www.jeol.co.jp/news/detail/20140507.776.html

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