早期アルツハイマー病に対する新規抗Aβ薬gantenerumabが2つの第3相試験で失敗:GRADUATE I・II
Two Phase 3 Trials of Gantenerumab in Early Alzheimer’s Disease
背景
デュカヌマブとレカネマブの臨床試験成功は、アミロイドβ(Aβ)標的薬を早期アルツハイマー病(AD)治療の前線にもたらした。
アメリカWashington UniversityのBatemanら(GRADUATE I ・GRADUATE II)は、新規抗Aβ薬gantenerumabの効果・安全性を検証する2件の第3相試験を行った(対照:プラセボ, n=985, n=980)。
対象患者は、ADによる軽度認知障害/軽度認知症を有しPETまたはCSF検査でADと診断された50〜90歳の成人で、一次アウトカムは、116週時点でのCDR-SBスコアのベースラインからの変化である。
結論
Gantenerumabの一次アウトカムに対する効果を認めなかった(GRADUATE I:gantenerumab群 3.35 vs. プラセボ群 3.65, 差 -0.31, GRADUATE II:gantenerumab群 2.82 vs. プラセボ群 3.01, 差 -0.19)。
実薬群患者の28.0%(GRADUATE I)・26.8%(GRADUATE II)でアミロイド班陰性状態が達成され、いずれの試験でも実薬群患者はCSF中のリン酸化タウ濃度が低かった。実薬群患者の24.9%に浮腫を伴うアミロイド関連画像異常(ARIA-E)が発生し、5.0%に症候性ARIA-Eが発生した。
評価
F. Hoffmann-La Rocheの新薬だが、典型的な第3相試験の失敗で、抗Aβ薬の更なる展開に水を差す衝撃的な結果となった。NEJM Editorialは”surprising”と驚きを隠さず、「Aβ標的化戦略には未だ多数の不明点がある」、としている。慎重な再評価が必要である。