逆転の発想、エピトープ編集でAMLへの標的免疫療法を可能にする
Epitope editing enables targeted immunotherapy of acute myeloid leukaemia
背景
急性骨髄性白血病(AML)の細胞は大半の表面マーカーが正常細胞と共通し、B細胞型急性リンパ性白血病におけるCD19のような標的をもたないことから、on-target off-tumor毒性のためにモノクローナル抗体やCAR-T細胞による治療が困難であった。
アメリカBoston Children's HospitalのCasiratiらは、同種造血幹/前駆細胞移植で用いられるドナーの造血幹/前駆細胞(HSPC)に対し、エピトープ編集を行い、抗体結合能を失わせることで、白血病細胞の標的化を可能にする新規アプローチを報告した。
結論
AMLで過剰発現するFLT3・KIT・IL-3RA(CD123)受容体の塩基編集によって作り出された「ステルス受容体」は、正常な機能への影響(ノックアウト)なく、抗体結合能を喪失した。改変受容体を発現したこれらの細胞は、CAR-T細胞を用いた殺傷に対して抵抗性をもつことが確認された。また、エピトープ編集されたHSPCは、編集されていない細胞と同様の機能・再増殖性・多能性を維持しており、遺伝毒性プロファイルも安全であった。
FLT3編集細胞とCD123編集細胞のCAR-T細胞に対する抵抗性は、マウスモデルにおいても実証された。FLT3とCD123をともに編集した細胞、さらにKITも含むトリプル編集細胞も、また、CAR-T細胞療法に対して抵抗性があり、on-target off-tumor毒性を軽減した多重標的免疫療法の概念が実証された。
評価
特異性の高い抗原を探すのではなく、エピトープ編集により移植される正常HSPCを脱-標的化するという逆転の発想により、AMLの免疫療法で毒性を低減しうることを実証した。AMLに留まらない応用性をもつ概念実証である。