重症免疫不全アクチン障害DOCK11欠乏症を報告
Systemic Inflammation and Normocytic Anemia in DOCK11 Deficiency
背景
免疫疾患にアクチン障害(actinopathies)が関連するエビデンスが増えており、その多くにdedicator of cytokinesis(DOCK)遺伝子の関わることが明かにされている。
オーストリアSt. Anna Children’s Cancer Research InstituteのBoztugらは、感染症・早期発症の重度免疫調節異常・赤血球の不同・奇形を伴うさまざまな重度正球性貧血・発達遅延で受診した4家系4名の患者におけるDOCK11(cell division cycle 42 [CDC42:低分子量 Rho GTPase] を活性化するグアニンヌクレオチド交換因子)欠乏症を報告している。
結論
患者のDOCK11に稀なX連鎖生殖細胞変異を同定した。この変異により、2名の患者で蛋白発現が阻止され、全患者でCDC42活性化が障害された。患者由来T細胞は糸状仮足を形成せず、遊走異常を呈した。この所見はDock11ノックアウトマウス由来T細胞でも再現され、さらにdock11ノックアウトゼブラフィッシュでは、貧血と赤血球形態異常が再現された。貧血は活性化CDC42の異所発現により改善した。
評価
報告患者中3名(ヌルバリアント保有)が死亡した、という重症疾患である。すでに報告されているDOCK2・DOCK8変異に続き、免疫系における細胞骨格・細胞運動の役割という重要テーマを開く発端研究である。