経頭蓋交流電気刺激による認知機能の改善を示唆:メタアナリシス
A meta-analysis suggests that tACS improves cognition in healthy, aging, and psychiatric populations
背景
経頭蓋交流電気刺激(tACS)は、2006年に初めて報告された新たな非侵襲的脳刺激法であり、特定周波数の電気刺激により脳の固有振動を同調させ(entrainment)、修飾するもので、経頭蓋直流電気刺激より安全に認知・運動機能を改善する可能性が示唆されている。
アメリカBoston UniversityのGroverらは、2006年から2021年に公開された健常人・神経疾患患者・精神疾患患者を対象としたtACS研究を検索し、認知能力への影響を評価する系統的レビュー・メタアナリシスを実施した。
結論
102件の研究、304種の効果測定が抽出された。研究参加者は計2,893名で、平均年齢30歳、高齢参加者は333名、臨床的障害を有する患者は177名であった。tACS治療は認知機能の軽度から中等度の改善と関連し、ワーキングメモリ・長期記憶・注意・実行機能・流動性知能の認知ドメインで明確であった。認知機能の改善は、tACS処置中(「オンライン」)よりも処置後(「オフライン」効果)で明確であった。脳の複数領域を同時に標的化した研究では、2領域の相対的な位相(同位相か逆位相か)によって認知機能を向上・低下させることも示された。認知機能の改善は、高齢者、神経・精神障害を有する参加者でも認められた。
評価
既存研究のメタアナリシスにより、認知機能改善におけるtACSの大きなポテンシャルを示した。特に複数領域を同時に標的化するアプローチは、脳の報酬ネットワークに介入できる可能性を示した点で興味深い。ただし、本研究は改善効果の持続性については明らかにしておらず、臨床応用への課題となる。