タウリンが老化を防ぐ?
Taurine deficiency as a driver of aging
背景
タウリンは生体内に広く存在し、神経伝達や心臓機能の保護、視覚の維持などに役割を果たす準必須微量栄養素である。このたび、タウリンと老化との関連に光を当てる新たな研究が登場した。
インドNational Institute of ImmunologyのSinghらは、複数の種類の加齢動物で血中タウリン濃度を測定し、タウリン補充が健康と寿命に与える影響を調査した。
結論
マウス・サル・ヒトでタウリン血中濃度は加齢とともに顕著に減少した。月齢14ヵ月のマウスに対し、死亡するまでタウリンの経口投与を行うと、対照と比して有意に寿命が延長した(中央値で10〜12%延長)。タウリン投与マウスでは、肥満・骨格強度・神経筋協調性・握力・不安・記憶力・グルコース恒常性・消化管通過速度が改善されていた。アカゲザルでの投与でも同様の結果が認められ、線虫でも生存期間を延長した。さらにタウリンは細胞老化を抑制し、テロメラーゼ欠乏の悪影響から保護し、DNA損傷、炎症系サイトカインを抑制、ミトコンドリアを機能不全から保護した。
EPIC-Norfolk研究(n=11,966)のデータでは、タウリン、中間体ヒポタウリン、アセチル化化合物N-アセチルタウリンの血中濃度低下が、腹部肥満・高血圧・炎症・2型糖尿病有病率と関連していた。さらにこれらの物質は、運動後の健康被験者で血中濃度が上昇することも示された。
評価
栄養ドリンクに2,000mg配合されていることでお馴染みのタウリンだが、その欠乏が老化と重要な関連を持っている、という説得力のある示唆を与えた。基礎研究段階の結果だが、従前の研究のレベルを超えており、未だ試みられたことのない前向大規模臨床試験を正当化する。