RCTの「統計学的有意差なし」は「無効」を証明するか
Evidence of Lack of Treatment Efficacy Derived From Statistically Nonsignificant Results of Randomized Clinical Trials
背景
RCT結果の統計的非有意は一般には介入の無効性を示すと受け取られやすいが、その直感はどの程度正当化できるのか。
スイスUniversity of GenevaのThomas Pernegerらは、2021年に主要誌に掲載された一次アウトカムに統計学的有意差がない169件のRCTについて、帰無(無効)仮説と対立(有効)仮説の尤度比を計算した。
結論
169件のうち、15件(8.9%)で尤度比が <1、154件(91.1%)で尤度比が >1だった。尤度比とP値との相関は弱かった。117件(69.2%)で尤度比が10を超え、88件(52.1%)で100を超えた。言い換えれば、RCTにおいて一次アウトカムに統計学的有意差のなかったほとんどの結果は、新規治療法が無効であったことを証明していると考えられる。統計学的に有意差のなかった結果に、帰無仮説と対立仮説の尤度比を併記することは、結果の解釈を改善するだろう。
評価
尤度比という簡単に算出できる指標により、「統計学的非有意」の「実質的無効」性を評価できる、という分りやすい提案である。JAMA Editorialは、臨床診断での的中率の概念と比べうる直感的尺度として、この指標を評価しているが、問題は重要・複雑で、議論がすぐ収束するわけではなさそうである(https://discourse.datamethods.org/t/analogy-between-clinical-trials-and-diagnostic-tests-using-likelihood-ratios-to-interpret-negative-trials/6888)。