簡明な遺伝子注射治療で猫を長期不妊化
Durable contraception in the female domestic cat using viral-vectored delivery of a feline anti-Müllerian hormone transgene
背景
交尾排卵動物である猫は非常に繁殖力が強く、増えすぎた野良猫による環境被害が世界中で報告されている。
アメリカHarvard Medical SchoolのPépinらは、猫体内での継続的な抗ミュラー管ホルモン(Anti-Müllerian Hormone: AMH)発現が長期不妊に有効であるとの仮説のもと、6匹の雌猫に対し、AMH遺伝子のアデノ随伴ウイルスベクター(AAV9-fcMISv2)による筋肉内注射送達を行った。2度の交尾試験後に2年間の追跡調査を行い、妊娠・導入遺伝子発現・生殖ホルモン値等を継続的に観察した。
結論
AAV9-fcMISv2遺伝子注射を受けた6匹の猫では、高レベルのAMHが継続的に発現された。交尾試験後、遺伝子送達されなかったコントロール猫3匹は正常に妊娠出産したのに対して、遺伝子注射を受けた6匹はいずれも妊娠せず、そのうち4匹は交尾行動をとらなかった。追跡期間中、有害事象発生はなかった。
評価
全く新しい避妊法の開発で、侵襲性も大幅に低い。長期追跡は必須だが、有効性・安全性が確認されれば、スタンダードとなる可能性がある。さらに、何らかの形でのヒトへの応用も考えられる。