自己免疫疾患の現在:英国から最大の疫学報告
Incidence, prevalence, and co-occurrence of autoimmune disorders over time and by age, sex, and socioeconomic status: a population-based cohort study of 22 million individuals in the UK

カテゴリー
Top Journal
ジャーナル名
The Lancet
年月
June 2023
401
開始ページ
1878

背景

自己免疫疾患には、大規模疫学研究が必要である。
ベルギーKatolieke Universiteit LeuvenのConradらは、英国CPRDコホート22,009,375名の電子カルテデータに基づき、同国で最も一般的な19の自己免疫疾患の疫学を調査した。

結論

同コホートで、2000年1月1日〜2019年6月30日間に少なくとも1つの自己免疫疾患と新たに診断されたのは、978,872名であった(平均年齢54.0歳:[女性]63.9%, [男性]36.1%)。研究期間中に、全自己免疫疾患の年齢・性別標準化発生率比は漸増した(IRR 2017-19 vs. 2000-02 1.04)。最大の増加は、セリアック病(2.19)・シェーグレン症候群(2.09)・グレーブス(バセドウ)病(2.07)でみられ、悪性貧血(0.79)・橋本甲状腺炎(0.81)は大幅に発症が減少した。総体として、調査期間中に全人口の10.2%が19の自己免疫疾患の何れかに罹患していた。悪性貧血・関節リウマチ・グレーブス病・全身性エリテマトーデス(SLE)では、社会経済格差があった。小児1型糖尿病(冬に多く診断)・白斑(夏に多く診断)には季節性が見られ、さまざまな疾患で地域差がみられた。特にシェーグレン症候群・SLE・全身性強皮症では関連性がみられた。また、小児1型糖尿病患者では、アジソン病(IRR 26.5)・セリアック病(28.4)・甲状腺疾患(橋本甲状腺炎 13.3とグレーブス病 6.7)罹患率が著しく高く、多発性硬化症は他の自己免疫疾患との併存率が低かった。

評価

イギリスでの多大学コンソーシアの協働による、最新・最大の自己免疫疾患一般の疫学調査報告で、以降の参照点となる。イギリス一国とはいえ、その罹患率が上昇しつつあり、ここ20年で国民の約10人に1人が罹患した、という驚くべき状況を示した。また、性別・社会経済ステータス・季節・地域による差異やクラスター性等、散発的に報告・示唆されていた関連をさらに補強し、特にクラスター性に関して著者らは、「一部の自己免疫疾患は、偶然または監視の強化だけで予想されるより高頻度で併発する傾向がある。これは、それらが危険因子を共有していることを意味する」と明言している。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(Top Journal)

The New England Journal of Medicine(NEJM)、The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Nature、Nature Medicine、Science、Science Translational Medicine、Cell