小児希少疾患のゲノム診断を実装する:DDD
Genomic Diagnosis of Rare Pediatric Disease in the United Kingdom and Ireland
背景
ゲノム分析の臨床実装の試みは、始まったばかりである。
イギリスUniversity of ExeterのWrightら(DDD)は、英国・アイルランド24地域の遺伝診療科において、単一遺伝子性疾患の可能性が高いが、診断困難な重度発達障害の発端者がいる13,500超家族を対象として、ゲノム診断実装の大規模研究を行った。標準化表現型データを整備し、エクソームシーケンシング・マイクロアレイ解析を行って、新規原因遺伝子を追求し、また反復的にバリアント解析を行うパイプラインを構築して、候補バリアントを同定した。臨床チームは、その妥当性を検討して患者・家族にコンサルテーションを行った。多重回帰分析により、診断確率に影響を及ぼす要因を評価した。
結論
発端者13,449名を同定した。 最終候補バリアント数の平均は、両親・発端者トリオ 1 組あたり1.0、発端者単独では2.5 であった。バリアントの分類に臨床アプローチと計算機アプローチを併用すると、発端者の約41%が診断に到達し、その76%が新規疾患バリアントであった。発端者の22%が、単一遺伝子性発達障害と強く関連する遺伝子に臨床的意義不明のバリアントを有した。診断確率にもっとも大きな影響を与えたのは、両親・発端者トリオの参加であった(OR 4.70)。発端者の診断確率を低下させた因子は、超早産(OR 0.39)・子宮内抗てんかん薬曝露(0.44)・母体DM(0.52)・アフリカ系(0.51)であった。
評価
小児希少疾患のゲノム診断の実装に関する、現時点での最大・最先端の報告である。臨床アプローチと計算機アプローチを相補させるという方法論で、ほぼ半数で診断に到達できる、という注目すべき結果を示した。診断到達への「トリオ参加」の重要性を発見して実行の指針とするとともに、診断を困難にする要因も同定して次段階の研究課題も示した。