男性不妊症の重要原因はpiRNA プロセシング異常?
Variant PNLDC1, Defective piRNA Processing, and Azoospermia
背景
P-element-induced wimpy testis(PIWI)-interacting RNA(piRNA)は、短鎖ノンコーディングRNA で、生殖細胞中のみで同定されている。Poly(A)-specific RNase-like domain containing 1(PNLDC1)はそのプロセシングの枢要タンパクで、マウスにおける欠損が無精子症・雄性不妊症の原因となることが示されている。デンマークRigshospitaletのAlmstrupらは、非閉塞性無精子症と診断された男性924名を対象として、エクソーム解析等で同タンパク・遺伝子異常の可能性を検討した。
結論
患者中血縁関係のない男性4名(3名は中東系)でPNLDC1変異を同定した。変異は、両アレルストップゲイン変異p.R452Ter(rs200629089)・両アレル新規ミスセンス変異p.P84S・2複合ヘテロ接合性変異p.M259T(rs141903829)/p.L35PfsTer3(rs754159168)・両アレル標準スプライスアクセプター部位新規変異c.607-2A→Tであった。精巣では高頻度の減数分裂エラーと精子形成停止が認められた。全症例の精巣細胞で、PNLDC1以外のpiRNAプロセシングタンパクPIWIL1・PIWIL4・MYBL1・TDRKHの遺伝子・タンパク発現の大幅低下も認めた。PNLDC1変異保有者は、piRNA長分布とパキテン期piRNA数に有意の変化があった。
評価
精子形成におけるpiRNAsの重要性は知られており、男性不妊症の原因として既に2件の遺伝子異常が報告されている。この報告は、マウスレベル実験で病因性が示されている PNLDC1変異が実際に男性不妊症につながることを初めて示したもので、piRNA プロセシング異常は男性不妊症の重要な病因サブグループとなる可能性がある。