Harvard調査が示すアメリカ小児「ADHD」の過剰診断
Attention Deficit-Hyperactivity Disorder and Month of School Enrollment
背景
アメリカでは子供の注意欠陥多動性障害(ADHD)が注目の的になっているが、その診断には恣意性が入りやすい。Harvard Medical SchoolのJenaらは、この診断に入学・入園時年齢が影響しているという仮説を検討する後向研究を行った。大規模保険データベースから小児407,846名のデータを取得して、 幼稚園入園が9月1日時点で5歳という要件の州とそうでない州において、8月生まれの児と9月生まれの児とでADHDの診断割合を比較した。また、処方記録を用いても同様の比較を行った。
結論
保険請求データでは、9/1基準州のADHD診断率は、8月生まれの児で10,000人あたり85.1人、9月生まれで63人、絶対差は21.5人であった。これに対し9/1非基準州では絶対差は8.9であった。このような差は処方記録に基づく治療率でも認められたが、他月の間では認められず、また9/1基準州で8月生児と 9月生児との間に喘息・糖尿病・肥満の発生率に有意差は認められなかった。
評価
5〜6歳児での生まれ1年差は大きく、このようなことが起こりえることは明らかだが、大規模調査によって「ADHD」診断の問題性を明らかにした。学校にADHD診断を要求する、という全米的風潮が過剰診断圧となっている。