脳動静脈奇形の原因にKRAS活性化型変異
Somatic Activating KRAS Mutations in Arteriovenous Malformations of the Brain
背景
孤発性脳内動静脈奇形(AVM)の原因が遺伝子変異に帰せられる、という興味ある報告がなされた。スイスUniversity of GenevaのNikolaevらによるもので、72名の患者の組織検体のエクソームDNA配列決定を行ったものである。
結論
72名のAVM患者中45名で、組織にKRASの活性型変異(KRASG12A、KRASG12Vなど)が認められた。AVMの内皮細胞を培養し、KRASの活性型変異を同定した。AVM患者から分離したKRASG12V培養内皮細胞系では、ERKが活性化し、血管新生関連遺伝子発現とNotchシグナルが亢進しており、細胞遊走能が高かった。さらに、これらの変化は、MAPK-ERKシグナルの抑制によって回復された。脳血管内皮細胞におけるKRAS活性型変異によるMAPK-ERKシグナルの亢進は、AVMを起因しうる。
評価
原因不明であった孤発性AVMに関するブレークスルー研究である。癌との関連の深いKRAS遺伝子の活性化変異との関連は興味深く、今回発見されたKRAS遺伝子12codonのG12V変異は大腸癌等でも認められているものである。体細胞変異の誘因や薬剤治療の可能性など、新しい研究分野も広がっている。