新型コロナウイルスSARS-CoV-2による院内環境汚染:シンガポールNCID報告
Air, Surface Environmental, and Personal Protective Equipment Contamination by Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 (SARS-CoV-2) From a Symptomatic Patient
背景
新型コロナウイルスSARS-CoV-2の院内環境汚染能は。シンガポールNational Centre for Infectious DiseasesのMarimuthuらは、2020年1月24日~2月4日に同国SARS-CoV-2 outbreak centerにおいて、感染患者3名を収容した空気隔離室(1時間あたり12回の換気)の前室とトイレの26ヶ所の表面環境サンプル、個人用保護具(PPE)サンプル、および空気サンプルを採取し、汚染を検討した。
結論
患者Aの部屋は、患者がまだ症状を呈している間(4日目と10日目の定期清掃後)にサンプル採取した。全サンプルはウイルス陰性であった。患者Bは、症状があった8日目と無症状であった11日目に定期清掃後に採取されたサンプルで陰性であった。患者Cは、定期掃除前にサンプルを採取し、室内の15ヶ所中13ヶ所(87%、排気ファンを含む)とトイレ5ヶ所中3ヶ所(60%、便器・シンク・ドアハンドル)で陽性であった。前室と廊下のサンプルは陰性であった。患者Cは肺炎を伴わない上気道病変を有し、下痢がないにもかかわらず便2検体が陽性であった。患者Cはウイルス排出量が多く、鼻咽頭サンプルのサイクル閾値は25.69であった(患者A・Bは31.31および35.33)。PPEは靴の前部分表面1スワブのみ陽性であった。空気サンプルはすべて陰性であった。
評価
最初期に感染封じ込めに成功したシンガポールセンターからの報告である。患者はすべて軽症だったが、便中への排出とPPEへの少量付着、そして空中残存のないことが注目される。同センターでは高頻度接触部分は毎日2回5,000 ppmのジクロロイソシアヌル酸ナトリウム(SDCIC)により消毒され、床は1,000 ppm SDCICにより毎日消毒された。SDCIC消毒後の陽性サンプルはなかった、という。