がん患者の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19):武漢からの第一報告
SARS-CoV-2 Transmission in Patients With Cancer at a Tertiary Care Hospital in Wuhan, China
背景
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)の最重要臨床問題の一つは、がん患者での発生リスクと転帰である。中国Wuhan University(武漢大学)のXieらは、2019年12月30日~2020年2月17日に、武漢大学中南医院放射線腫瘍科に入院したがん患者1,524名のデータを報告している。
結論
武漢大学病院がん患者のSARS-CoV-2感染率は0.79%で(1,524名中12名)、同期間に武漢市で報告された全COVID-19発生率(0.37%)より高かった。感染患者の年齢中央値は66歳で、66.7%が60歳以上、58.3%がNSCLCであった。5名は免疫療法を併用・非併用下で化学療法または放射線療法を受けていた。3名(25.0%)がSARS(COVID-19)を発症し、1名が集中治療を必要とした。2020年3月10日時点で、6名(50.0%)が退院、3名(25.0%)が死亡した。
評価
武漢でのピーク以前データが3月25日付で発表されたものである。武漢大学病院は三次施設として138名のCOVID-19患者を入院させたが、その41.3%が院内感染であった、という。この報告は転院患者を含むものかどうか言及しておらず、「同病院腫瘍科入院患者」のデータとして示されている。市中住民の感染率よりは高いものの、同院での院内感染の爆発は示唆されない。武漢市全体のデータが望まれる。なお、この論文にコメントしたイタリア医は、イタリアではCOVID-19患者の最頻(19.5%)の併存疾患は癌であるとし、"we're doing something wrong?" と問いかけている。