マルチモビディティを有する高齢者の施設介護ニーズ
What do nursing home residents with mental-physical multimorbidity need and who actually knows this? A cross-sectional cohort study
背景
高齢化にともない、介護施設で身体的・精神的マルチモビディティ(mental-physical multimorbidity)を有する高齢入居者の増加すると予想され、介護ニーズに関する研究が重要となった。オランダRadboud universityのvan den Brinkrinkらは、17の老人精神医療介護ホーム(geronto-psychiatric nursing home)における身体的・精神的マルチモビディティを有する非認知症入居者(n=141)の介護ニーズを調査する横断研究を行った。評価には、チャートレビュー・半構造化インタビュー・神経心理簡易テスト・アンケート・Camberwell Assessment of Need for the Elderly(CANE)を用いた。
結論
入居者は平均11.89のニーズの24.2%が満たされていないと報告した。他方、スタッフは平均14.73のニーズを報告し、その10.8%が満たされていない、とした。入居者によって満たされていないと報告されたのはほとんどが社会的ニーズで、スタッフ報告で心理学的ニーズが多いのと対照的であった。入居者・スタッフ間での意見の相違が最も一般的だったのは、施設環境・入居者仲間・日中のアクティビティであった。スタッフが「何らかの支援が必要」とみなした言動に対し、入居者のほぼ半数が「支援が不要」と回答していた。うつ・不安・介護依存度が、ニーズが満たされないことの最も重要な決定要因であった。
評価
重要な問題で、精神疾患のある高齢者のウェルビーイングアウトカムに関する系統レビュー(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29266972)もすでにあるが、この問題に特定した研究はほとんどない。入居者とスタッフの意識のずれを浮かび上がらせたことはインパクトがある。