女性アスリートのスポーツ関連脳震盪予防戦略「FAIRコンセンサス」策定のために
Prevention strategies and modifiable risk factors for concussion: a systematic review and meta-analysis for the Female, woman and girl Athlete Injury pRevention (FAIR) consensus

カテゴリー
整形外科・理学療法
ジャーナル名
British Journal of Sports Medicine
年月
September 2025
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開始ページ
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背景

未成年を含む女性アスリートにおけるスポーツ関連脳震盪(SRC)および頭部衝撃/頭部加速イベント(head impact/head acceleration event: HAE)の予防戦略と、潜在的な修正可能リスク因子(MRFs)に関するエビデンスは。
カナダUniversity of CalgaryのEmeryらは、女性のための安全な実践ガイドライン策定(Female, woman and girl Athlete Injury pRevention[FAIR] consensus)を目指す系統レビューとメタアナリシスを行った。

結論

108研究を分析した。女性アスリートのSRC予防戦略およびMRFsに関するエビデンスは極めて限定的であった。SRC予防戦略(用具、方針・規則、トレーニング、管理)およびMRFs(34要因)を評価した研究のうち、女性・少女に特化した推定値を報告していたのは37%(40件)に留まった。
メタアナリシスに基づき、思春期の女性・少女のラクロスおよびサッカーにおけるヘッドギアの使用は、SRC発生率を30%減少させることと関連していたが、その確実性は「非常に低い」レベルであった(IRR=0.70)。アイウェアの使用や、人工芝と天然芝のサーフェスの違いによるSRC発生率の差は認められなかった。

評価

男性・少年アスリートのデータに集約されがちであったSRC研究において、女性・少女アスリートに限定したエビデンスを包括的に評価しようとした、初めての試みである。しかし、得られたエビデンスの限定性と異質性(Heterogeneity)は、この分野の深刻な研究ギャップを浮き彫りにした。
例えば、女性アスリートは男性と比較して脳震盪の発生率が高く、回復に時間を要する可能性があることが示唆されているが、予防戦略に関する推奨は依然として男性主体のデータに基づいている。「’FAIR’ consensus」策定への途は遠い。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(整形外科・理学療法)

Physical Therapy