虚血性脳卒中後の心肺運動の効果を海馬体積で検証:PISCES-ZODIAC試験
Poststroke Cardiorespiratory Exercise for Brain Volume and Cognition: A Randomized Clinical Trial

カテゴリー
整形外科・理学療法
ジャーナル名
JAMA Network Open
年月
August 2025
8
開始ページ
e2528907

背景

脳卒中後リハビリとしての心肺運動(cardiorespiratory exercise: CRX)介入は、海馬体積(HV)の保持と認知機能改善に有効か。
オーストラリアMonash UniversityのBrodtmannら(PISCES-ZODIAC)は、虚血性脳卒中後の患者104名を、CRX群(有酸素運動と筋力トレーニング)と対照群(バランストレーニングとストレッチ)に割り付け、週3回、60分のセッションを8週間行う第2b相RCTを実施した。
一次アウトカムは、2ヵ月目と4ヵ月目の訪問におけるHVの相対的変化であった。

結論

8週間のCRX介入は安全かつ実行可能であったが、一次アウトカムにおいて群間有意差はなかった。二次アウトカムの12ヵ月時点のトレイルメイキングテスト(TMT-B)では、CRX群は対照群よりも有意に優れた(調整済み中央値差:−3.75秒)。

評価

脳卒中後リハビリは重要主題で、系統レビュー・メタアナリシスも多いが(https://doi.org/10.1080/10749357.2024.2356393)、この研究はHVを一次アウトカムとして運動介入の効果を長期的に検証した点で新規性が高い。HVの保持に有意差がないという結果を出したが、対照群での萎縮率(−0.11%)は、過去の脳卒中生存者で報告された萎縮率(−1.25%)(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32772680/)よりも低く、対照群のバランストレーニングとストレッチにも脳体積保護効果があった可能性が示唆される。TMT-Bにおいて、CRX群は対照群よりも有意に優れた成績を示したが、TMT-Bは非海馬依存的な前頭頭頂ネットワーク機能に強く依存する。この認知的利益が、HVの保持とは独立して、脳の白質やネットワーク機能の改善を通じて発現した可能性があり、脳卒中後の認知機能低下予防におけるCRXの潜在的な保護効果を示している。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(整形外科・理学療法)

Physical Therapy