ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の病原性モノクローナル抗体を同定
Monoclonal Antibodies in the Pathogenesis of Heparin-Induced Thrombocytopenia
背景
ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)は、ヘパリンと血小板第4因子(PF4)の複合体を標的とする抗体によって引き起こされる免疫介在性血小板疾患で、従来、HIT抗体はポリクローナルな免疫応答の結果であると考えられてきたが、他の稀な抗PF4疾患では、単クローン性または寡クローン性の抗体が同定されている。
カナダMcMaster UniversityのNazyらは、臨床的・血清学的にHITと診断された患者9名を対象に、その病原性HIT抗体のクローン性を調査した。
結論
全患者から単クローン性の病原性抗体が同定された。この抗体は、アフィニティ精製により単離され、血小板活性化能を持つことが確認された。
評価
長年ポリクローナルと考えられてきたHITだが、COVID-19で問題となったvaccine-Induced Immune thrombotic thrombocytopenia(VITT: ワクチン誘導性免疫介在性血栓性血小板減少症)が単クローン性であることが報告された(https://ashpublications.org/blood/article/140/1/73/485235/Monoclonal-and-oligoclonal-anti-platelet-factor-4)ため、再検討された。高感度な質量分析法と抗体精製技術を用いて、説得的な形で従来の見解を覆した。病原性単クローン性抗体の同定により、今後はより高感度で特異的な診断法の開発が可能になる。さらに、抗イディオタイプ抗体や特異的免疫調節薬の開発も理論的には可能となった。パラダイムシフトをもたらすランドマーク研究である。