慢性腰痛の治療で経済成長?
Productivity Losses Due to Long-Term Back Problems in Working-Age Australians
背景
慢性腰痛は、個人の生産的な労働参加を妨げ、経済的負担や不平等を拡大させるが、腰痛が将来のマクロの労働生産性に与える影響は十分に定量化されていない。
オーストラリアMonash UniversityのDockingらは、オーストラリアの生産年齢人口(15〜64歳)を対象に動的モデルを用いた分析を行い、2024〜2033年における慢性的腰痛による経済的損失を推定した。
一次アウトカムは、長期的な腰痛による生存年数の損失、フルタイム相当の労働者数の損失、生産性の損失であった。
結論
2024年時点で、オーストラリアでは295万538人に慢性腰痛があり、2033年までに325万8,612人に増加すると予測された。2024〜2033年の10年間で、同国のGDPは推定6,380億豪ドルの損失と推定された。この損失は、主に病欠と生産性の低下によるもので、早期離職による損失を上回っていた。
評価
慢性腰痛のマクロ経済インパクトの推定で、ここでの人年あたりUS$13,827の損失は、2020のスウェーデン報告での人年あたりUS$10,466と比較可能である(https://bmjopen.bmj.com/content/bmjopen/10/8/e036638.full.pdf)。このオーストラリアの論文では特に、プレゼンティイズム(欠勤には至っていないものの生産性が低下している状態)が生産性損失の最大の要因であることが示されており、重要である。著者らの分析結果はまた、慢性腰痛によるGDP損失が経済成長(〜2%)に比肩しうる莫大なものであることをも示唆しており、腰痛治療の経済インパクトを再認識させる。

