米国大学スポーツにおける虐待的指導を大規模調査
Associations of abusive supervision among collegiate athletes from equity-deserving groups

カテゴリー
整形外科・理学療法
ジャーナル名
British Journal of Sports Medicine
年月
July 2025
59
開始ページ
1124

背景

スポーツにおける虐待的指導は、指導者と選手間の権力関係に起因する問題であり、特に人種・民族、性別、性的指向、障害の有無などで多数派とは異なる属性を持つ選手(equity-deserving athletes)への影響が懸念されている。
アメリカStanford UniversityのTuakli-Wosornuらは、全米大学体育協会(NCAA)の選手3317名を対象とした2021〜22年度のmyPlaybook調査のデータを用いて、どのような集団が虐待的指導をより多く経験し、また指導者のどのような特性が虐待的指導と関連しているかを分析した。

結論

18.6%が指導者による何らかの虐待的指導を報告した。共変量を調整後、障害の有無(オッズ比 1.17)とチームスポーツへの参加(1.10)が、虐待的指導報告と有意に関連した。一方で、人種・民族、性別、性的指向、指導者と選手の性別、人種・民族の同一性には有意な関連はなかった。
指導者の特性では、勝利への強い献身(オッズ比 1.47)や勝利へのこだわり(1.24)は、虐待的指導報告オッズ増と関連していた。対照的に、選手のニーズへの配慮(0.82)や意見の尊重(0.89)を示す指導者は、虐待的指導報告のオッズが低かった。定期的に敬意を持ったコミュニケーションをとる指導者は、より支援的であると評価された。

評価

大学スポーツにおける虐待的指導の実態を大規模に調査し、特定の脆弱集団(障害を持つ選手、チームスポーツ選手)がより高いリスクに直面していることを示した。特に、人種や性別といった明らかな人口統計学的特徴ではなく、選手の障害の有無や競技形態が虐待的指導のリスク因子として浮き彫りになった点は、この問題への新たな視点を提供する。また、勝利至上主義的な指導スタイルが虐待と関連する一方で、選手の幸福や自律性を尊重する指導が虐待を減らすことを示したことは、スポーツ指導の改善に向けた具体的な介入ポイントを提示する。これらの知見は、安全なスポーツ環境を構築するための政策や教育プログラムの策定に直接的に貢献する。

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取り上げる主なジャーナル(整形外科・理学療法)

Physical Therapy