10〜16歳児の運動時の脱水リスクは大人と同程度
Thermoregulation and dehydration in children and youth exercising in extreme heat compared with adults
背景
これまで、小児は生理学的に大人よりも暑熱下での運動時に体温上昇や脱水が起きやすいと考えられていたが、近年この見解は覆されつつある。
オーストラリアUniversity of SydneyのJayらは、10〜16歳の健康な小児68名と18〜40歳の成人24名を対象に、30℃と40℃の環境下で45分間のトレッドミル運動を3回実施し、深部体温(Tgi)の測定と体重変化から脱水状態を判定を行った。
結論
小児は、体温上昇(高体温症)および生理的脱水リスクにおいて大人と同程度であった。30℃での60% VO2peakを除き、運動中のTgi上昇に年齢による影響は認められなかった(p≧0.176)。また、30℃(p≧0.08)でも40℃(p≧0.08)でも、脱水速度に年齢による影響はなかった。大人の発汗量を予測する既存の計算ツールを小児に適用した場合、平均誤差は+0.08kg/時で、発汗量の変動の80.5%を説明できた。これは、このツールが小児にも応用可能であることを示唆している。
評価
本研究は、先行研究と比較してデータが多く(255実験のデータ)、小児と大人の暑熱下での運動時における生理学的反応が同等であるという、近年の見解を裏付ける強固なエビデンスとなった。特に、アメリカ小児科学会(AAP)などの方針転換を実証的に支持し、今後のスポーツ指導や公衆衛生政策に直接的影響を与える。著者らは、小児は生理学的に脱水しやすいわけではなく、行動的な要因(水分摂取不足)が脱水リスクを高めている可能性が高いとしている。また、大人の汗量計算ツールが小児にも応用可能であることを示したことは、スポーツ指導者や保護者が小児の熱中症を予防する上で、非常に有用である。