「帯状疱疹ワクチンで認知症を予防」:ウェールズ「自然実験」の再現に成功
Herpes Zoster Vaccination and Dementia Occurrence
背景
ウェールズでの「自然実験」研究(https://doi.org/10.1038/s41586-025-08800-x)により、帯状疱疹(HZ)ワクチン接種が認知症を予防する、という興味深い仮説が一定の支持を得た。
アメリカStanford UniversityのPomirchyらは、2016年11月1日に70〜79歳へのHZワクチン無料提供が開始されたオーストラリアで同様の準実験を行い、同国の異なる集団・医療制度下で、HZワクチン接種が認知症の新規診断確率に与える影響を分析した(対象:101,219名)。
結論
HZワクチン接種の対象年齢をわずかに超えた群と、対象となった群を比較する準実験デザインが採用された。両群は過去の医療サービス利用や慢性疾患診断においてバランスが取れており、ワクチン接種確率は対象群で16.4%急増した。
HZワクチンの接種資格を持つことで、7.4年間で認知症の新規診断確率が1.8%有意に低下することが明らかになった。このワクチン接種資格は、他の予防医療サービスや認知症以外の慢性疾患診断には影響を与えなかった。
評価
高インパクトであったウェールズ「自然実験」の、交絡排除デザインを洗練した追試であり、再現は成功した。ただし、データはオーストラリアにおけるプライマリケア患者全体を完全に代表するものではなく、また、観察された予防効果は、あくまでワクチン接種プログラム開始時に80歳前後であった個人にのみ当てはまる極めて限定的なものである。しかし、この追試の成功のインパクトは大きく、また推定されたNNTのこれまた衝撃的な少なさ(56)は、「HZワクチンで認知症予防」というコンセプトのさらなる追求を正当化する。