運動後のcTn上昇とCADに関連はあるのか:TREAT試験
Relationship Between Exercise-Induced Cardiac Troponin Elevations and Occult Coronary Atherosclerosis in Middle-Aged Athletes
背景
運動による心筋トロポニン(cTn)値の上昇には個人差が大きい。
オランダRadboud UniversityのEijsvogelsら(TREAT)は、長距離歩行・サイクリング・ランニングをレクリエーションで行う中年参加者1,011名を対象に、運動後のcTn高値と低値の参加者における冠動脈アテローム性動脈硬化症(CAD)の有病率と程度を比較した。
運動前後hs-cTnTおよびhs-cTnII濃度を評価後、年齢・性別・スポーツをマッチングさせた参加者(cTn高値68名と低値34名)がCTCAを受けた。これにより、CADの有無や特徴(CAD-RADS・CACスコア)を評価し、CT-FFRで狭窄の血行動態的意義を解析した。
結論
運動後のcTn高値と低値の参加者間で、CADの有病率や程度(冠動脈CACスコア)に有意差は認められなかった。CT-FFRの結果にも差はなかった。しかし、hs-cTnT、hs-cTnI濃度とCAD-RADS分類の間には弱い関連性(P<0.05、R2: 4〜8%)が認められた。
評価
急性運動負荷はcTn値を上昇させるが、その意味は議論の的である。マラソンランナーを対象とした研究では、ほぼ全員のcTnIが運動後に上昇しており、半数が心筋梗塞診断のカットオフ値を超えていた(https://www.ajconline.org/article/S0002-9149(14)01240-5/abstract)。
TREAT試験は、初めてこの問題を詳細な心機能分析を伴うRCTで検証したもので、運動誘発性cTn濃度上昇が潜在性CADに起因するものではないことを示唆した。重要で興味深い結論であり、対象者(この試験はすべて男性)を拡大し、角度を変えて追試される価値がある。