胃腸炎を伴う重度栄養失調児への補液は経口でなくてよい
Intravenous Rehydration for Severe Acute Malnutrition with Gastroenteritis
背景
重度急性栄養失調児への静脈内補液は体液過剰への懸念から非推奨だが、ハードエビデンスは不十分で、現行治療の死亡率は高い。
イギリスImperial College LondonのMaitlandら(GASTROSAM)は、アフリカ4ヵ国で胃腸炎・脱水症状を伴う重度急性栄養失調児272名(6ヵ月〜12歳)を対象に、経口・急速静脈内・緩徐静脈内の3つの補液戦略を比較する非盲検優越性試験を実施した。28日間の追跡調査を行った。
一次エンドポイントは、96時間後の死亡率である。
結論
一次エンドポイントは、経口群8%、静脈内群7%で、群間有意差はなかった(リスク比 1.02)。28日後死亡率も経口群12%、静脈内群10%で同程度であった。重篤有害事象発生率は経口群23%、急速静脈内群21%、緩速静脈内群15%であり、肺水腫・心不全・体液過剰の所見は認められなかった。
評価
WHOガイドラインは、静脈内輸液による水分過剰・心不全の懸念から、重度栄養失調児には経口補液を推奨している。これは、栄養失調児の脱水の検出が困難で、誤診されやすいという認識にも基づく(https://iris.who.int/bitstream/handle/10665/95584/9789241506328_eng.pdf;jsessionid=45FE60426C5B1D6C3A00BBDC081BCEDA)。このICL論文は、遵守されてきたガイドラインの書き換えをせまるもので、重要である。入院中の子どもたちは薬剤投与のための静脈ラインを持つのが普通で、医療スタッフの業務効率も上がる。