血友病BのAAV遺伝子治療の長期利益にランドマーク結果
Sustained Clinical Benefit of AAV Gene Therapy in Severe Hemophilia B
背景
血友病Bに対するアデノ随伴ウイルス(AAV)利用遺伝子治療は、すでに開始以後10年以上を経過している。
イギリスUniversity College LondonのNathwaniらは、重症血友病B男性10名を対象に、scAAV2/8-LP1-hFIXcoベクターを3段階用量で単回点滴静注する遺伝子治療の長期安全性と持続性を評価した。
有効性アウトカムは、第IX因子活性・年間出血率・第IX因子濃縮製剤使用で、安全性アウトカムは、臨床イベント・肝機能・画像検査等で評価した。追跡期間中央値は13.0年であった。
結論
第IX因子活性は追跡期間中すべての用量コホートで安定していた(平均値:低用量群 1.7 IU/dL、中用量群 2.3 IU/dL、高用量群 4.8 IU/dL)。7名は補充療法が不要となり、年間出血率は9.7分の1、第IX因子製剤使用量は12.4分の1に減少した。ベクター関連有害事象は15件あり、主に一過性アミノトランスフェラーゼ上昇であった。第IX因子インヒビター・血栓症・慢性肝障害は認められず、確認された2件の癌はベクターとは無関係と判断された。肝生検では導入遺伝子の発現が確認されたが、線維化や異形成はなかった。AAV8中和抗体価の高さはベクターの再投与の障壁となる可能性を示唆する。
評価
中央値13年(最長13.8年)という追跡調査はすべての遺伝子治療中最長で、これは遺伝子治療のランドマーク報告である。年間出血率がほぼ10分の1に減少するなど、ここでの結果は、同疾患治療において遺伝子治療が「成功」したことを示唆している。ただし、より新しい治療モード(etranacogene dezaparvovec・ fidanacogene elaparvovec) は、第IX因子(FIX)レベルがより高い。