慢性腰痛患者に「自然」を処方?
“Being away from everything”: Exploring the importance of access to nature for individuals living with chronic low back pain
背景
慢性腰痛(cLBP)に対し、医師やソーシャルワーカーが自然に近づく活動を紹介(処方)する代替非薬物心理社会的アプローチ、グリーン・ソーシャル・プレスクリプション(GSP: green social prescribing)が注目されている。
イギリスUniversity of ExeterのHughesらは、cLBP患者10名(女性9名、平均年齢50.1歳、平均罹患歴19.1年)への半構造化面接調査により、GSPの実行可能性を検討する質的横断研究を行った。
結論
再帰的主題分析により、「自然の重要性」と「アクセスできない自然」の二つのテーマが抽出された。分析により、cLBP患者にとって自然空間へのアクセスが重要である一方、特に身体障害を持つ人にとってはアクセスの困難さが、排除的になりうることを明らかにした。今後の研究では、この知見に基づき、自然空間へのアクセスを容易にするための介入の開発や、自然をより身近に、あるいは屋内に取り込む介入の開発が重要となる。
評価
GSPは21世紀に入って現れた、基本的には軽〜中等度の精神疾患患者を対象とした、森林浴などを含むアプローチで(https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1155/hsc/2016261)、すでにイギリスNHSはプログラム化している(https://www.england.nhs.uk/personalisedcare/social-prescribing/green-social-prescribing/)。cLBP治療への応用に関する研究は初めてで、参加者も少ない質的研究であり、予備調査(feasibility study)とみなされる。GSPは非薬物療法の新たな選択肢として有望であり、この分野への投資の必要性を示すエビデンスは増えている。