家族性赤血球増加症にEPO遺伝子の機能獲得変異を同定
Identification of Hepatic-like EPO as a Cause of Polycythemia
背景
二次性赤血球増加症には、エリスロポエチン(EPO)遺伝子に関連するとみられる家系性疾患がある。
フランスNantes UniversiteのGardieらは、血中EPO濃度が正常範囲内の赤血球増多症6家系における病的EPOバリアントの同定を報告している。
結論
EPO遺伝子の非コード領域に3つの新規遺伝子変異を同定した。レポーターアッセイとiPS細胞由来肝細胞様細胞レベル実験から、これらの遺伝子変異は未知の制御エレメントを標的とし、その存在下で低酸素応答が増強されることが判明した。患者EPOは等電点電気泳動プロファイルが変化しており、早産児や肝疾患患者の肝由来様EPOと同一であった。患者血漿・臍帯血由来EPOはin vitroで受容体シグナル伝達活性増強を示し、肝臓型糖鎖付加による機能獲得を示唆した。
評価
真性赤血球増多症はJAK2遺伝子変異が原因で起こるが、EPOレベルは低い。遺伝子変異による二次性赤血球増多症には既報があり、単一変異が家族性赤血球増多症を起因しうることが示されたが(https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa1709064)、ここでの研究は、非コード制御領域に低酸素応答を増強する機能獲得バリアントを初めて同定した興味深いものである。遺伝子因の解明されていない二次性赤血球増多症の家系は数多く、それら患者への新しいアプローチを先導する重要な研究である。