クレードI MPXV感染症にテコビリマットは無益
Tecovirimat for Clade I MPXV Infection in the Democratic Republic of Congo
背景
テコビリマットは動物試験と健康なヒトでの安全性評価に基づき、欧米でMPOX(サル痘)治療薬として承認されているが、患者におけるRCTのエビデンスはない。
コンゴ民主共和国Institut National de la Recherche BiomedicaleのMbala-Kingebeniら(PALM007 Writing Group)は、同国のクレード I MPXV患者597名をテコビリマットまたはプラセボに割り付けるRCTを行った(全患者に支持療法を実施)。一次エンドポイントはMPOX病変消失までの日数で、安全性も評価した。
結論
テコビリマットの一次エンドポイント効果を認めなかった[一次エンドポイント中央値は、テコビリマット群7日、プラセボ群8日であった(競合リスクハザード比 1.13)]。全死亡率は1.7%と、国内報告の4.6%を下回った。14日目のMPXV PCR陰性率は両群で同程度であった。有害事象発生率にも重篤有害事象報告にも群間差はなかった。
評価
天然痘ウイルス感染症治療薬テコビリマットのMPOX患者への使用は、パンデミックへの臨機的対応策だったが、初めての本格RCTにより無益性が示された。動物実験での有効性がヒトで再現されない典型事例で、バイオテロリズムの懸念もあり、代替薬の開発・検証が急務となった。現在有望とされる例には、brincidofovir・tecovirimatの併用、およびモノクローナル抗体薬がある。