非再発性二次進行性多発性硬化症にtolebrutinib登場:HERCULES
Tolebrutinib in Nonrelapsing Secondary Progressive Multiple Sclerosis
背景
非再発性二次進行性多発性硬化症(nrSPMS)に承認された治療法はないが、経口ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬tolebrutinibは障害進行のリスクを低減するか。
アメリカCleveland ClinicのFoxら(HERCULES)は、nrSPMS患者1,131名をtolebrutinib群またはプラセボに割り付ける第3相RCTを行った。
一次エンドポイントは、EDSSスコアを用いた6ヵ月以上持続する障害進行の確認であった。
結論
Tolebrutinibの一次エンドポイント効果を認めた[22.6% vs. 30.7%。
重篤有害事象は、実薬群の15.0%、プラセボ群の10.4%に発生した]。
ALT値上昇(正常上限の3倍以上)の発生率は、実薬群で4.0%、プラセボ群で1.6%であった。
評価
再発性多発性硬化症患者を対象とした同薬とteriflunomideとの対決試験(GEMINI 1・2)報告とともに、NEJMに同時掲載された(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2415985)。
MRI所見ではtolebrutinib群で脳病変が減少しており、tolebrutinibの末梢Bリンパ球への影響と一致している。同薬は中枢神経系への浸透性が高く、脳脊髄液中で高い阻害濃度を示す点が他のBTK阻害薬と異なる。肝酵素値の上昇が観察されたが、多くは軽度で回復した。対決試験ではteriflunomideへの優越性は示されず、ブレークスルーとは言えないが、nrSPMS患者への新しいオプションをもたらした。