ワクチン「自然実験」で、帯状疱疹ウィルスと認知症の関連に新エビデンス
A natural experiment on the effect of herpes zoster vaccination on dementia
背景
神経向性ウイルスと認知症発症の関連が示唆されており、ワクチン接種が免疫系にオフターゲット効果をもたらす可能性も指摘されている。
アメリカStanford UniversityのGeldsetzerらは、帯状疱疹ワクチン接種プログラム開始時に認知症を患っていなかった71~88歳の高齢者282,541名の健康記録を分析し、弱毒生帯状疱疹ワクチン接種と認知症診断の因果関係を評価した。
結論
帯状疱疹ワクチン接種は7年間の追跡期間中に新たな認知症診断のリスクを3.5パーセントポイント(相対値 20.0%)有意に減少させた。この保護効果は男性よりも女性で顕著であった。イングランドとウェールズの統合データや死亡診断書を用いた検証でも同様の結果が得られた。
評価
長く提唱されている仮説だが、交絡やバイアスの影響を受けやすい疫学研究では、上質のエビデンスを得ることができなかった。ここでの手法は、同地域における帯状疱疹ワクチン接種導入前後の同年齢人口集団を比較(「自然実験」)し、堅牢な統計解析を加える、というユニークなもので、帯状疱疹ウィルス感染と認知症との関連に、強いエビデンスをもたらした。Nature Medicineでも、旧型(生ワクチン)と新型(遺伝子組換えワクチン)の帯状疱疹ワクチン接種者の認知症リスクを比較した研究で、遺伝子組換えワクチン(シングリックス)接種者は、生ワクチン接種者と比較して、認知症と診断されずに生存する期間が17%長かったと報告されている(https://www.nature.com/articles/s41591-024-03201-5)。
著者らは、弱毒生ワクチンとプラセボ接種を比較するRCTを計画しており、慈善資金を募っている。