家庭内空気汚染による世界の疾病負担:GBD 2021分析
Global, regional, and national burden of household air pollution, 1990-2021: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2021
背景
Global Burden of Disease(GBD)は、University of Washington Institute for Health Metrics and Evaluation(IHME)が主導する代表的国際疫学研究である。
カナダUniversity of British ColumbiaのBrauerら(GBD 2021 HAP Collaborators)は、1990〜2021年の世界204の国と地域における、主に調理用固形バイオマス燃料使用に起因する家庭内空気汚染(HAP)への曝露に関する系統レビューと包括分析の結果を発表している。
結論
2021年、世界人口の33.8%にあたる26.7億人があらゆる発生源からの有害大気汚染物質に曝露された。これは1990年の56.7%から減少したものの、絶対値では30.2億人から0.35億人(10%)と微減に留まる。HAPに起因する障害調整生存年(DALY)は1.11億で全DALYの3.9%を占め、年齢標準化DALYは1990年から63.8%減少した。しかし、サハラ以南アフリカと南アジアでは依然として負担が高い。HAPに起因するDALYの割合は、男性の方が女性より高く、約3分の1は妊娠期間の短さと低出生体重出生によって媒介された。多くの地域で、曝露減少が人口増加で相殺されている。
評価
Bill & Melinda Gates Foundationによるプロジェクトで、HAPに起因する負担を推定するこれまでの取り組みを更新・拡張したものである。
調理用燃料をバイオマスから液化石油ガスに切り替える効果を研究した大規模RCTであるHAPIN試験では、PM2.5曝露の減少が示された一方、介入によって小児肺炎の発生率が減少したり、出生体重が増加したりすることはなかった(http://doi.org/10.1056/NEJMoa2305681)。空気汚染はHAPの問題ではなく、地域全体の大気汚染の問題である。