アメリカで侵襲性GAS感染症が激増している:CDC
Invasive Group A Streptococcal Infections in 10 US States
背景
2013〜2022年のアメリカ10州における侵襲性A群溶血性レンサ球菌(GAS)感染症発生率のトレンド報告が更新された。
アメリカCDCのGregoryらは、2013〜2022年における侵襲性GAS感染症患者21,312名の臨床データを、医療記録のレビューにより収集した。2013〜2014年では、利用可能な分離株をemm型分類して分離株の薬剤感受性を同定し、2015年以降は、全ゲノム解析を行った。
結論
同期間に10州において21,312名の感染者が報告され、1,981名が死亡した。患者の57.5%は男性で、0〜17歳が6.0%、18〜64歳が63.7%、65歳以上が30.4%であった。5.5%はアメリカ先住民またはアラスカ先住民、14.3%は黒人、67.1%は白人であった。
発生率は、2013年の10万名あたり3.6名から、2022年には10万名あたり8.2名に上昇した(P for trend<0.001)。発生率が最も高かったのは65歳以上であったが、時間経過に伴う相対的な増加は、18〜64歳の成人(10万名あたり3.2〜8.7名)が最も大きかった。アメリカ先住民やアラスカ先住民では、他の人種や民族グループより発生率が高かった。ホームレス・注射薬物使用者・長期療養施設入居者では、GAS感染症の発生率が大幅に上昇した。検査された分離株のうち、マクロライドとクリンダマイシンに感受性のない分離株は、2013年の12.7%から2022年には33.1%に増加した。
評価
特に薬物使用者・ホームレスでの発生率が高く、2022年にはホームレス人口の感染率は、10万人中807人だった。この感染率は、これまでに記録された世界最高レベルであり、アメリカ社会の病巣を映している。他に、肥満・喫煙・糖尿病・急性皮膚障害等の複数基礎疾患を抱える成人患者の割合は、2022年には93%となり、またemm型の多様性が増し、以前はまれだった血清型が感染増加の約40%を占めている。emm型の分布の変化は、2013年から2022年にかけてのマクロライドとクリンダマイシン耐性のほぼ3倍の増加に寄与している。