抗肥満薬で人工関節置換術の再手術リスクを軽減する
Postoperative Weight Loss After Antiobesity Medications and Revision Risk After Joint Replacement
背景
人工関節置換術を受ける肥満患者に抗肥満薬を使用して体重を減少させると、再置換リスクを低減できるか。
中国Central South UniversityのZengらは、イギリスで股関節または膝関節置換術を受けた肥満患者3,691名のデータを分析し、抗肥満薬(オルリスタット、シブトラミン、GLP-1受容体作動薬、リモナバント)投与開始後1年以内の2%〜10%または10%以上の体重減少と、抗肥満薬投与開始後5年および10年以内の再手術リスクとの関連を評価した。
結論
抗肥満薬投与開始後1年以内の体重減少率が高いほど、5年および10年以内の再手術リスクが低かった(体重増加または不変、2%〜10%、または10%以上の体重減少で、各5.6%・4.4%・3.7%)。体重増加または不変の群と比較したハザード比(HR)は、2%〜10%の体重減少で0.75、10%以上の体重減少で0.57であった。
股関節と膝関節置換術についての個別分析でも同様の結果が得られた。
評価
抗肥満薬使用で人工関節置換再手術率を低減できる、という仮説を支持する初めての後向コホート研究で、術後に抗肥満薬を開始した症例のデータである。2023年の米国リウマチ学会(ACR)および米国股関節・膝関節外科学会議(AAHKS)診療ガイドラインは、肥満を理由に人工関節置換術を遅らせるべきではない、としており、術後に抗肥満薬を開始するという方策を正当化する。他方、術前に抗肥満薬を使用して減量してから手術する、という方策も当然考えられる(https://www.yalemedicine.org/news/anti-obesity-medications-before-surgery)。