2024年アフリカのMpoxエピデミックの現況
Evolving Epidemiology of Mpox in Africa in 2024
背景
ヒトサル痘(Mpox)は、1970年にコンゴ民主共和国(DRC)で確認されて以後エンデミックとなっていたが、2024年8月13日、アフリカ疾病予防管理センター(アフリカCDC)はMpoxをエピデミック(大陸公衆衛生緊急事態:PHECS)と宣言し、WHOも直ちに国際的エピデミック(PHEIC)を宣言した。
アフリカCDCのNdembiらは、2022年1月1日〜2024年10月30日にアフリカCDCに報告された臨床診断または検査診断に基づくすべてのMpox症例と死亡を分析し、時間的経緯・地理分布・疫学傾向を報告している。
結論
2022年1月1日〜2024年8月18日に、アフリカ12ヵ国で計45,652件のMpox症例が臨床診断され、検査で確認され、1,492名が死亡した(症例致死率 3.3%)。2022〜2024年にかけて、毎週の検査確認Mpox症例は2.8倍(176から489症例へ)増加したが、毎週の臨床症例は4.3倍(669から2,900症例へ)増加した。2024年にアフリカのMpox症例の約88%を報告したDRCでは、緊急事態宣言前に19,513症例があり、症例死亡率は3.1%、週平均591症例で、2023年の281と比較して著増している。2024年には、アフリカの6ヵ国が初めて輸入症例を報告し、ブルンジでも国内感染例が報告された。
評価
最初のPHEIC宣言時には、主に系統IIbが関与していたが、アフリカでの現在の流行は主に系統Ibによっている。DRCでは系統Iaの伝播が継続しており、西アフリカでは系統IIa、いくつかのアフリカ諸国では系統IIbの伝播が継続している。
Lancetでは、2024年5月〜10月にDRC南キヴ州の総合病院で診察された510件の疑いのある症例が詳述され、系統1bの臨床特性が報告されている(https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(25)00047-9/abstract)。Mpox制御における主要課題は症例の過少報告で、DRCでは、疑い症例の半数以下しか検査を受けておらず、また、その約半数しか陽性検知されていない。他方、すでにワクチンは約50万回分配布され、さらに170万回分がまもなく利用可能になる、という。