レンチウイルスベクターによる血友病A遺伝子治療の第1相成功を報告
Lentiviral Gene Therapy with CD34+ Hematopoietic Cells for Hemophilia A
背景
血友病Aは遺伝子治療の先進領域で、すでにアデノ随伴ウイルス(AAV)によるF8遺伝子送達が承認されているが、AAV使用には問題も多い。代替策として期待されているレンチウイルスベクターを用いた自家造血幹細胞(HSC)による遺伝子治療により、重症血友病A患者で第VIII因子が安定して発現したことが、単一施設研究で示された。
インド共和国St. John’s Research InstituteのSrivastavaらによる第I相試験で、22〜41歳で第VIII因子ンヒビターを保有しない重症血友病A患者5名を対象に、レンチウイルスベクターCD68-ET3-LVを用い、導入エンハンサーなし(グループ1、2名)または導入エンハンサーあり(グループ2、3名)で自家HSCを形質導入した。骨髄破壊的前処置後、患者に形質導入HSCを移植した。治療の安全性(生着およびレジメン関連毒性)と有効性(第VIII因子活性および年間出血率)を評価した。
結論
最終製剤のベクターコピー数は1細胞あたり、グループ1で1.0コピーと0.6コピー、グループ2で1.5コピー、0.6コピー、2.2コピーであった.重度好中球減少症の持続期間は7〜11日で、重度血小板減少症の持続期間は1〜7日だった。28日目から最終追跡までの第VIII因子活性の中央値は、グループ1で5.2 IU/dLと1.7 IU/dL、グループ2で37.1 IU/dL、19.3 IU/dL、39.9 IU/dLであった。さらに、累積追跡期間81ヵ月(中央値14ヵ月)の年間出血率は全ての患者で0であった。グレード2を超えるその他有害事象は全参加者で発生せず、最も一般的な有害事象は、嘔気だった。
評価
注目されていたレンチウイルスベクターによる血友病A治療だが、意外にもインドの国家事業として第1相を通過した。問題はAAVベクターを置換しうるかどうかで、可能性はあるが、脳性副腎白質ジストロフィー治療で報告された発癌の懸念をはらんでいる。第2相以降で最適化が図られることになるが、現時点では、AAVによるF8遺伝子治療を置換することになるかどうかは不明である。