妊娠前/妊娠初期のカップル対象の全国規模生殖遺伝子キャリアスクリーニングは実行可能:Mackenzie's Mission
Nationwide, Couple-Based Genetic Carrier Screening
背景
ゲノムシーケンシング技術の進展により、生殖遺伝子キャリアスクリーニング(RGCS)が、一国規模で提供できる可能性が開かれた。
オーストラリア"Mackenzie's Mission"(同国全土の妊娠前/妊娠初期のカップルを対象に、ゲノムシーケンシング技術によるRGCSを広く提供するプロジェクト)のDelatyckiらは、このプロジェクトの実行可能性・受容可能性・アウトカムを評価する目的で、医療提供者によりスクリーニング受診を提案された妊娠前/妊娠初期のカップル10,038組に対し、1,281以上の遺伝子の検査と、その結果の提供を行った。心理社会的影響、検査の受容可能性、スクリーニング対象の遺伝性疾患を持つ児が産まれる可能性が高いことが同定されたカップルの生殖に関する選択を確認した。
結論
参加カップルの90.7%がスクリーニングを完了し、その1.9%で、スクリーニング対象の遺伝性疾患を持つ児が産まれる可能性が高いことが同定された。これらの疾患には90種の遺伝子の病的バリアントが関連しており、疾患の74.3%は常染色体潜性遺伝であった。結果、受け取り後3ヵ月時点で、同定されたカップルの76.6%が、遺伝性疾患を持つ児をもつことを避けるために生殖医療を利用したか、利用する予定であった。遺伝性疾患を持つ児が産まれる可能性が高いことが同定されたカップルは、そうでないカップルよりも不安が大きかった。意思決定の後悔の大きさの中央値は全ての結果の群で低く、参加者の98.9%がスクリーニングを受容可能であるとした。
評価
同様のプロジェクトは中国でも検討されているが(https://www.nature.com/articles/s41525-023-00383-8)、このオーストラリアのプロジェクトは、「重度severity」バリアントに焦点を絞った、実践的なアプローチである(https://www.nature.com/articles/s41431-024-01738-0)。今回の試行におけるRGCSの受診率は推定45.9%であり、もし全額無償になった場合は、さらに上昇するだろう。1990年代にトリソミー21のスクリーニングが初めて提供された時、受診率は1.6%であったが、2013年には83.0%に増加している。