角膜上皮幹細胞疲弊症に対する他家iPS細胞由来角膜上皮細胞シートのFIH試験、安全性を報告
Induced pluripotent stem-cell-derived corneal epithelium for transplant surgery: a single-arm, open-label, first-in-human interventional study in Japan
背景
角膜上皮幹細胞疲弊症(LSCD)患者に、ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)から得られた他家角膜上皮細胞シート(iCEPS)を移植するFirst-in-Human(FIH)試験が行われた。
日本Osaka University(大阪大学)のNishidaらによるもので、LSCD患者4名(4眼)を対象とし、一次アウトカムは有害事象(安全性)で、52週の追跡期間と追加1年間経過観察した。
結論
有害事象は、52週間の追跡期間中に26件発生し(治療眼で軽度18件、中等度1件、軽度非眼性事象7件)、追加1年の安全性モニタリング期間に9件発生した。2年間の観察期間中、一次アウトカムの腫瘍形成や臨床的拒絶反応などの重篤有害事象は発生しなかった。二次有効性アウトカムにおいて、52週時点で全症例にLSCD病期の改善、矯正遠見視力の向上、角膜混濁の軽減がみられた。角膜上皮欠損・自覚症状・QOLスコア・角膜新生血管は、ほとんどが改善または不変であった。
評価
LSCDに対するドナー角膜移植は、拒絶反応やドナー不足といった問題により進んでいない。iPSCを使ったこの世界初のFIH試験の成功は重要で、他家移植の安全性確認と腫瘍形成の否定という第一関門を通過するとともに、有力な有効性の示唆を報告した。大規模臨床試験を経て世界標準となることが期待される。