ALS患者の発話を支援する最新ブレイン・コンピュータ・インターフェースを発表:BrainGate2
An Accurate and Rapidly Calibrating Speech Neuroprosthesis
背景
ブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)によるコミュニケーション支援技術が急進している。
アメリカUniversity of CaliforniaのCardら(BrainGate2)は、四肢麻痺および重度構音障害を有する筋萎縮性側索硬化症(ALS)男性患者1名(45歳)に対する、ALS発症後5年時点でのBCIデバイス移植実験を報告している。左前中心回に4つの微小電極アレイを埋め込み、256個の皮質内電極から脳の神経活動を記録した。指示発話と自発会話の両場面でこのシステムを使用し、発話を意図した際の皮質神経活動のデコーディング結果を記録した。デコードされた単語を画面に表示し、テキスト読み上げソフトウェアで音声を生成した。その音声は、ALS発症前の被験者の声のように聞こえるよう設計した。
結論
移植25日後の最初の音声データトレーニングセッションでは、システムは50語の語彙を使用して30分で99.6%の精度を達成した。
デバイスの調整には、被験者の発話意図時に30分間の皮質記録、および、その後の処理が必要であった。2日目には、さらに1.4時間のシステム・トレーニングの後、デバイスは125,000語の語彙を使用して90.2%の精度を達成した。さらにトレーニングデータを追加した結果、デバイスは移植後8.4ヵ月にわたり97.5%の精度を維持し、被験者はこのデバイスを用いて、累積時間248時間超、毎分約32語の速度で自分のペースでの会話によるコミュニケーションを行った。
評価
先行研究の2倍の皮質内電極を植え込み、これまでの報告中最も正確な発声支援機能を実現した。累積使用時間16時間での単語エラー率は2.5%であったといい、このパフォーマンスは、スマホの英語の自動音声認識での単語エラー率約5%、健常者が段落を声に出して読む場合の単語エラー率1〜2%に匹敵するレベルである。ただし、この種のBCIの実験は、患者の重症度が異なるため、相互に直接比較することはできない。長期の生物学的安定性、という難題もあるが、臨床に近づいていることは確実である。
BrainGate(https://www.braingate.org/)では、ALSの他に、頸髄損傷・脳幹卒中・筋ジストロフィー等の患者への応用も視野に入っている、という。