Long COVIDリスクはパンデミックの経過とワクチン接種とともに減少
Postacute Sequelae of SARS-CoV-2 Infection in the Pre-Delta, Delta, and Omicron Eras
背景
COVID-19におけるSARS-CoV-2感染急性期後後遺症(PASC: Long-COVID)は、重要な疫学問題である。
アメリカWashington UniversityのAl-Alyらは、同国退役軍人省2020/03/01~2022/01/31のSARS-CoV-2感染者441,583名、非感染者4,748,504名を含む健康記録データに基づき、COVID-19パンデミックにおけるSARS-CoV-2感染後1年時点でのPASCの累積発生率を推定した。感染者は、次の5コホートに分けた。1.デルタ流行期前ワクチン非接種感染者、2.デルタ株流行期ワクチン非接種感染者、3.デルタ株流行期ワクチン接種感染者、4.オミクロン株流行期ワクチン非接種感染者、5.オミクロン株流行期ワクチン接種感染者。
結論
SARS-CoV-2感染後1年時点でのPASCの累積発生率は、デルタ流行期前が最も高かった(感染者の10.42%)。ワクチン非接種者では、デルタ株流行期には9.51%、オミクロン株流行期には7.76%に低下した。ワクチン接種者では、デルタ株流行期では5.34%、オミクロン株流行期は3.50%と、パンデミックの経過とともに減少した。PASCリスクの減少は71.89%はワクチンに起因し、残余は、ウイルス特性、疾患の検出と管理の改善等によった。
評価
COVID-19疫学の中心グループの一つによるアメリカLong-COVIDの最大規模の調査である。同後遺症は、全症例の7%前後に発生するとも言われているが、ここでは、ウィルスの変異とワクチン接種、という二つの重要要因に関わる時間的変化を主題化し、Long-COVID発生率の時間的低減と、その最大要因としてのワクチン接種とを確認した。著者らは、2022年のオミクロン株流行期以後、Long-COVIDでは、心臓・脳・腎臓・肺関連症状が減少し、代謝機能・消化器系に関連する症状が増加したようだ、ともしている。